小冊子テキストページ
社団法人日本塗装工業会安全委員会

  シンナー乱用の根絶を!


--青少年を守るため、私たちは塗料の水性化を推進しています。--

子供たちがあぶない
    深刻なシンナー乱用の害


シンナーをなくすには元から絶たなきや駄目なのです!


 警察庁の報告によりますと、平成16年のシンナー等有機溶剤の吸引などの検挙・補導人員は4,057人。
うち少年の検挙・補導人員は2,245人で、55.3%を占め、依然としてシンナー等有機溶剤が少年を中心に乱用されている状況が指摘されています。

 実際にシンナー中毒の少年たちに正面から向き合い、年間10,000件を超える相談を受けて、地道にこの問題と取り組んでいる水谷修先生(元横浜市立戸塚高校定時制教師)は、ショッキングな例を挙げています。

半年間、睡眠以外の時間をずっとシンナーを吸っていた少女は、大脳皮質の8%が萎縮し、わずか15歳で80歳代の脳になっていました。

脳はいったんダメージを受けると、再生不可能な臓器です。
彼女の脳は元通りになりません。
一生それを背負って生きていかなくてはならないのです。

 シンナー常習者は、乱用経験者も含めると、200万人ともいわれる現実があります。
シンナー依存症になると、中・高生の場合、治療できる病院は全国で数カ所しかなく、本当の意味で治すことができないといわれています。

シンナー依存者をこれ以上増やさないため、シンナーをはじめ有機溶剤を取り扱う私たち塗装業者は、さらに塗料の水性化を進めるとともに、塗料の製造、販売業者や地域と一体となってシンナー乱用防止に取り組みます。



シンナー乱用・販売は法律で罰せられます


「毒物及び劇物取締法」では、シンナーを吸ったり、またはその目的で所持すると、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられます。
また、乱用目的に使われることを知りながら販売した者は、2年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられます。


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シンナー乱用と青少年問題

水谷修氏のプロフィール

1956年横浜生まれ。上智大文学部哲学科挙。
横浜市の定時制高校の教師となった頃から夜回りを始め、少年の非行・薬物問題と取り組む。
その経験をもとにテレビ・ラジオなどへの出演、各地の講演会などを通して、少年非行の実態を広く社会に訴え続けている。


著書は『夜回り先生』(サンクチュアリ出版)、『さらば、哀しみの青春』(高文研)、『さよならが、いえなくて』(日本評論社)、『ドラッグ世代一第五次薬物汚染期の若者たち』(太陽企画出版)など。


「夜回り先生」水谷修氏の講演より

「夜回り先生」になった理由

 私は10年前まで皆さん方と同じ昼の世界の住人、横浜でも名門校といわれる金沢高校という高校で相当優秀な生徒たちを相手に授業をやり、部活動の面倒をみる生活をしていました。

その頃は自分が薬物、シンナー等の問題にかかわるとは思ってもいませんでした。
ところが、今から10年前に、私の親友で東京の工業高校の夜間部で教員をやっている男の話を間いたのがきっかけで夜間高校に移りました。

 私が赴任した夜間高校は、ともかく学校中が荒れていました。
人間関係をつくらなければこいつらとは話にも何にもならないと思いました。
それで始めたのが夜回りでした。

 毎晩、夜11時ぐらいに学校から出て、自分の学校の生徒だけではないのですが、学校周辺をたむろしているいろいろな子どもたちを相手に
「少し話をするか、何か悩んでいることはあるか」
「どうした、学校を開けてあるよ」
「何か飲み物をごちそうしてやるから話をするか」と声をかけて歩きました。

 そうこうやっている間に、夜の町の中で悪さをやっているいろいろな子どもたちが、私に相談してくるようになりました。

「先生、アタシの彼、暴力団を抜けたいけどヤバイの」
「いいよ、組長に会って話をつけてやるよ」
「先生、オレ、暴走族を抜けたいけど、でもヤバイんだ」
「いいよ、頭と話してやる」

おかげさまで私は堅気ですから指は10本ありますが、右手の親指はつぶされ、腹は4針ですからかすり傷ですが、刺されたこともありました。
でも、いまだに1度として逃げたことはありません。


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ある生徒の死

 そんな私がものすごい、とんでもない失敗をして1人のかけがえのない生徒を殺してしまいました。
それが実は皆さんに関係の深いシンナー、トルエンなのです。

 その頃、私はシンナー、薬物について何も知らなかったのです。
シンナーもある程度乱用していくと幻覚が見えるようになってきます。
小学校6年からシンナーを乱用していたその生徒は、走ってくるダンプカーに飛び込んで死にました。
即死でした。

告別式が終わった後、お母さんとたった2人、火葬場まで行きました。
焼き上がってステンレスの台車で運ばれてきた。
それを見た瞬間にお母さんが熱い灰を、両手を真っ赤にやけどをしながら、握りしめて泣いたんです。
「シンナーが憎い。うちの子を2度殺した。1度目は命を奪い、2度目は骨までも奪った」と。

 ご存じの通りシンナーは有機溶剤です。シンナーは油質やカルシウムを溶かします。
人間の体は有機物質です。
人間の体の中で最もよく溶けるのは、脳と歯と骨です。
その子はシンナーを4年間どぶ吸いだったため、歯と骨はボロボロスカスカ。
焼かれた後、骨も残りませんでした。

 その後、青少年の薬物中毒を治療している病院で言われた一言が私の薬物との戦いの第一歩になりました。

「あんたが殺したんだよ。シンナーやドラッグをやめられないのは依存症という心の病気だよ。あんたは病気を愛の力で治そうとした。病気が愛の力や罰で治るのか。心の病気だって依存症だって立派な病気なんだ。医者の治療が必要なんだ」。

目からうろこが落ちる思いでした。


脳を壊すシンナー

 シンナーについては、初期は全く法による規制がありませんでした。
しかし、シンナー乱用は非常に大きな依存性を持つ危険な行為だということで、毒物及び劇物取締法という法律の中にシンナーを含めて、シンナーに関する取り締まりが始まりました。

 覚醒剤やヘロイン等の薬物は本当の意味で脳の中に直接作用して、報酬回路といわれる新しい回路を作ってそこで快体験をもたらす代物です。
ですから、ある意味では脳の中の神経系へ直接動いてくれるので、それほど物理的には壊さないのです。

ところがシンナーで一番困るのは油を溶かす性質です。
シンナーの中に牛の脂を入れてみるとすぐわかります。
あっという間に溶けてしまいます。

子どもたちに教えてやるときは、発砲スチロールを脳みその形にして、シンナーを霧吹きに入れて、シュッシュッとやります。
するとプチプチと溶けていきます。

『これがおまえたちの脳だぜ』
まさにこの現状が人間の脳の中で起きてしまうのです。

 私かあつかったケースでは、たった3ケ月のシンナー乱用で、大脳新皮質と呼ばれる外側が8%溶けたケースがあります。
中学校2年生の女の子です。
8%溶けた脳とは80代の高齢者の萎縮脳と同じです。

脳や神経細胞は物理的あるいは化学的を問わず、一度壊れたら二度と元には戻らない。
再生不能です。
ですから、非常に困った問題になります。


二度と元には戻らずそれで一生生きなければならないのです。


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シンナー乱用と青少年問題

国家的な危機に

 今、日本は第三次覚醒剤乱用期と言われています。
覚醒剤だけではありません。大変な薬物乱用の時代を迎えています。

 この第三次覚醒剤乱用期の宣言は1998年1月に橋本内閣によってなされました。
当時橋本首相はこうおっしやった。
「今回の第三次覚醒剤乱用期は日本国の存亡にかかわる問題だ。一つ間違えれば日本は危ない」

 皆さんは笑うかもしれませんが、今、アメリカの多くの有識者に「アメリカは何で滅びるか」と間くと、原子爆弾だという人はまずいません。
テロという人もいません。では、何か。
ドラッグです。
それほどアメリカは蔓延がひどいのです。

 では、なぜ橋本首相をして日本国存亡の問題と言わしめたのか。
それは日本の薬物乱用史上初めて10代の中高生を中心とする青少年に対して暴力団が組織的に薬物を流しているからです。
薬物と言うのは覚醒剤乱用期だからといって覚醒剤だけではない。
シンナー、大麻、マリファナ、MDMA、マジックマッシュルームなど、ありとあらゆる薬物が暴力団から10代の子供たちに流れています。

 若者、特に非行傾向があったり遊び傾向がある子は集団をつくっています。
悪いことをやる連中ほど大人と対抗しなければならないからです。
その集団に1リットルのシンナーを与えると、全員がやってしまいます。
ここが問題なんです。若者の薬物乱用は怖い。
私たちは「感染症」といいます。
歯止めが効かないのです。
その証拠に1994年の日本の薬物乱用者総数の推定数値は70万人と言われています。

2003年の発表では160万人です。シンナー乱用者は日本全国で70万人と私たちは推定しています。


シンナー管理の徹底を

 ぜひお願いしたいのは、トルエンに関してはどうしても皆さん方の業種では使わざるを得ないはずです。
だから、トルエンの購入について、例えば日塗装の都道府県支部や安全委員会に「トルエンをこういう理由で購入をした。
その後の処置についてはどうしている」という旨を報告して頂きたい。
これだけでトルエン流通がわかります。「何だ、そんな書類1枚」と言っても、今はPL法がありますから、そういったもの1枚があるかないかで、どれだけ業界が熱心に取り組んでいたかが、一般の人たちにも行政に対してもわかります。


塗料の水系化を

 皆さん方にお願いしたいのは、従業員は家族なのですから、その家族をいかに守るかと言う意味で従業員保護の意味からも水系塗料をどんどん促進して使って頂きたいことです。
また、有機溶剤をどうしても使わざるを得ない場合は、換気の徹底等を含めた従業員の保護に留意して頂きたいことです。
これは、非常に重要な問題だと思っています。

 こんな例も考えられます。
皆さん方の社員を、朝点呼をして「さて、現場に行って来い」と言ったら、その人間が実は朝酒を飲んでいて、途中で事故を起こしたら企業の責任が問われます。
朝、車に乗せていく以上お酒を飲んでいないのか、それを確認する義務は会社としてあります。
塗装現場で塗装中、換気が不十分なために有機溶剤系の塗料でフラフラになって、それで帰りに車を運転して事故を起こした場合にどうなるのでしょうか。


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また、逆にこうした問題にどう取り組んでいるのかをPRすれば、今はきちんと評価してもらえる時代だと思います。

 シックハウスにはならない安全な塗料で完全な仕事をきちんとやって、地球環境にも優しく、人間を守っていることを強調すれば、値段は多少高くてもそんな業者に頼みたいということもあるでしょう。
その意味で有機溶剤を使わないという流れは、ものすごく今後大きな流れになっていくのではないかと思います。


心を病む子供たち

 実は、今、日本の子どもたちが大変な状況にきています。
例えば、数字的にいえば薬物乱用者160万人、そのうちのだいたい90万人が10代、20代の少年及び青年だといわれています。
皆さんはご存じないと思いますが、リストカッターと言う手首を切ったり上腕を切ったり、体を切って血だらけになりながら生きている子どもたちは、日本で100万人を越したといわれています。
そのうち95%が女の子です。

 今、子どもたちの自殺者がものすごい勢いで増えています。
大変な問題になっています。
国もやっと重い腰を上げ始めました。

でも、それは単純な理由だと思います。
今は非常に攻撃的な時代です。
イライラした時代です。
子どもたちだって、親から「おまえは何をやっているんだ。
学校へ行っても勉強もできない。
おまえなんかやめてしまえ」とばかりいわれているとどうなるか。

そこで子どもたちは3つに分かれます。
一番多いのは大人が自分にやったことを仲間に対してやります。

いじめです。
いじめが猛烈に増えてきている。
子ども社会も大人化しています。

次にどうなるか。
昼の世界に背を向けて夜の世界に入る。
この世界にきたらすぐ暴力団の食い物にされます。

では心の優しい子はどうするか。
心の優しい子は結局仲間をいじめられない。
じやあ、と夜の世界にも入れない。
その子たちが薬物に逃げたりリストカットをしたりしている。
薬物は嫌なことを忘れさせてくれてフワっとした気分にします。

 私は『夜回り先生』という本を書いて、その冒頭からそういう子どもへのメッセージを載せてメールアドレスを載せました。
これまでにメール相談は15万作以上です。
ほぼ、全部返事を書いています。
今日も700くらい書きました。

「死にたい、死にたい」
「痛い、痛い」
「先生、シンナーやめられない。助けて」
よく、生きてきたなと思います。
でも、そこまで今は病んだ状態になっています。


薬物問題への理解を

 最後にお願いがあります。
実は薬物問題を言う場合に今シンナーに特化して話しましたが、覚醒剤、あるいは大麻、MDMA、さまざまな薬物が、今ものすごい勢いで日本社会の中で若者だけではなくて広がっています。
今誰が一番乱用しているかというと、私は大学生だと思っています。
それプラス20代の若い層にどんどん入ってきています。

 薬物がいろいろな意味で広がっている今は、国をあげてこの問題に取り組んでいます。
そんな中で日本塗装工業会がシンナーの青少年非行を抑えるために、「有機溶剤を使うことをやめよう」という運動をしていることを、厚生労働省など行政と結びついて宣伝していくことは大切です。

そうなると日本塗装工業会に加入していない方々が参加せざるを得ないような状況も出てくると思います。
ぜひ、ご協力よろしくお願いします。


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シンナー乱用と青少年問題

シンナーを吸うと人間はこうなる

          大脳の神経細胞が死滅。障害や記憶力の低下。

          視神経がおかされ、視力低下、失明。

          ボロボロになる。

気管支・肺  粘膜がおかされ単咳がたくさんでる。

肝臓       細胞の一部が死に食欲不振。おなかに液体がたまる。

食道・胃  胃の粘膜がおかされ、出血し、胃痛・吐き気をもよおす。

腎臓      腎臓の一部が死に、タンパク尿が出る。

生殖器   生理不順や生殖機能の低下。

手・足    ふるえ・しびれ・まひ

骨髄     赤血球を作らなくなり、貧血になる。

シンナー中毒とは・・・?!

シンナーは、トルエンを主剤とする雑多な有機溶剤の混合物で、この揮発性の特異な刺激臭のある液体が、めいてい状態を起こすので、それを楽しむ“シンナー遊び”が青少年の一部にまん延しました。
このガスを吸うと肺に吸収され中枢神経のまひ作用があらわれます。

くり返していると習慣性となります。長期にくり返していると頭痛、めまい、動悸などの
症状を示すほか、脳、内臓、骨などが冒されていきます。やめる以外に治療法はありません。


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塗装業界としての対策

 塗装工事業界ではシンナー等有機溶剤を扱う関係から警察関連の講演を関く機会もあり、ある講演会で「“青少年非行の原点"はシンナー乱用です。
非行はシンナーから始まるケースが多く、そのシンナー類を扱っているのがいわゆるペンキ屋さんです」と警察署長から名指を受けました。
 私たちは誤解されていると感じました。

どのようにすればよいのか協議を重ね、「シンナーをなくすには“元から絶だなきや駄目"」という結論に達し、(社)日本塗装工業会(略称:日塗装)安全委員会で本格的にこの問題に取り組みました。
 日塗装の安全委員会では施工業者のみではなく製造・販売・塗装(製販装)で組織する(社)日本塗料協会(現:日本塗料工業会)の協力を得て、研究をつづけてきました。


建築用塗料の水系化を促進

 目塗装の統計では、建築塗装の73.3%が塗り替え工事です。
云うまでもなく塗り替え工事は人が生活する場での塗装が中心になっています。
今や生活者の視点は環境問題や健康問題に向いており、使用される塗料への関心は高まっています。

 日塗装は、生活者に最も近い戸建て住宅塗り替えで「戸建て住宅リフォームサービスシステム(通称:ペインテナンス)」を運営しており、この中での塗り替え塗装仕様の使用塗料は水系塗料を主体としています。
塗料というと溶剤=シンナーをイメージされるようで、確かに以前は溶剤系塗料が主流でした。
この時代は、有機溶剤に起因した事故も多く、対策を強く望まれていました。
対策の第1が塗料の水系化であり、水系塗料の歴史は古くからありました。
しかし、性能を含む実用面で制限が多く普及に手間取った経緯がありました。

 平成5年には「公共建築工事共通仕様書」に外装仕様だが「複層仕上塗材(吹付けタイル)の上塗り材の種類は、特記による。特記がなければ水系上塗りとする」と、水系塗料使用の優先性が記載されました。
その後、地球温暖化問題やシックハウス症候群問題などが引き金となり、建築用塗料は一挙に水系化の道を進むことになりました。

 日塗装はこの動きに積極的に取り組み、事業計画の中に水系塗料を積極的に採用するよう方向付けを明記しました。

 溶剤系塗料を使用することの多かった外装塗料では、水系塗料と溶剤系塗料の比率が1996年水系塗料25:溶剤系塗料75が2000年には水系塗料35:溶剤系塗料65になり、その後加速的に水系化か進み、2005年には水系塗料70:溶剤塗料30と、水系化か顕著になりました。

 平成16年度版「公共建築工事標準仕様書バこはシックハウス問題を考慮して、屋内に限定ですが、下塗りから上塗りまで全て水系塗料で仕上げる塗装仕様が導入されています。
 大気汚染防止法が改定され、揮発性有機化合物(VOC)削減が重要なテーマになっています。日塗装は、大気汚染防止法には縛られませんが、自主規制としてVOC削減に取り組んでいます。
この様に日塗装は、可能な限り使用塗料の水系化を進め、溶剤=シンナーによる危険有害性を減らす取り組みを強力に推進しています。


水谷先生と協力

 私たちはこれまでシンナー乱用による青少年の非行問題を知りませんでしたが、青少年の薬物汚染問題の専門家で当時定時制高校の教師だった水谷修先生を委員会に招き講演をお願いしました。
委員の多くはその実態に驚き、施工業者としで出来るところから始めよう"ということになりました。

 水谷先生には安全委員会をはじめ、主に九州地区の支部安全大会で講演をして頂きました。
そうした活動の中で、先生にも塗料が溶剤系から水系に転換しつつあることを説明し、塗装業者への誤解を解き、私たちもシンナー乱用による青少年非行の実態を知ることができました。


 こうした問題は施工業者に限らず塗料メーカーや塗料販売店も同様です。
日塗装の会員は約3千社ですが、塗装業者は約4万社近くあるといわれています。
その業者への販路の多くに販売店が関係すると考えられるからです。

 塗料メーカーからは、「発注者からの条件が整えば製品を“水系化"することは可能である」との見解も非公式に得ました。

 残った問題は主に鉄郎を扱う土木関係です。残材の多くは官公庁工事から発生しますが、この問題を解決するにはまだ時間がかかりそうです。
産業廃棄物問題は今や、建設業全体の問題でもあり社会問題でもあります。

安全委員会では、長年“青少年のシンナー中毒"問題に取り組んできましたが、活動のまとめとして、今回この小冊子を作成しました。

水谷先生の講演を中心にしましたのは、この問題をより分かりやすく説明し、広く訴えやすいと考えたからです。

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安全委員会アピール

  安全・安心な塗装工事で
薬物汚染から青少年を守ります。


 水性化の進んでいる先進諸国でも、国が滅びるとしたら薬物からだと言われています。
日本では、薬物の市場は二兆円ともいわれ、供給源は暴力団が中心です。

乱用薬物で最も多いのが覚醒剤で、二番目がシンナーです。
「シンナーを扱うのは塗装業だから、薬物としての供給源も塗装業ではないか」
という誤解がありますが、実際には印刷用・洗浄用など、多くの用途でシンナーが使われています。

そして、私たち塗装業者は、現場からの盗難や不正な使用がないよう常に管理徹底を心がけています。

 私たちは塗料の水性化をさらに推進し、塗料の製造、販売、施工業者が一体となって、広く一般生活者の安全を守っていくことを宣言いたします。

 また、薬物依存者は、単に病院だけで治るということでもありません。
互いに仲間で話し合いながら治療をしていく「フリーダム」や「ダルク」といった全国的な組織があります。

 これらは行政からの補助だけでは、運営は十分ではないようです。
これを機会に、ぜひこれらの団体にも眼を向けて頂ければ幸いです。


塗装工業會の取り組み

 私ども(社)日本塗装工業会(略称:日塗装)は、日本で建築塗装を中心とした唯一の全国団体です。
日塗装は重点施策に「社会のニーズを充たす諸施策を推進し、評価される業種としての確立を図り、その重要性を周知する]を挙げています。

具体的には「建築ストック時代のもとで、益々建築物の長寿命化か望まれてきています。
このため「改修工事の施工技術や管理技術をより高め、顧客の満足度向上を図る。
併せて環境汚染防止や産業廃棄物の低減、省エネ、省資源等の地球環境問題に取り組み、社会の信頼と期待に応え、地位の向上を図るとともに塗装の重要性を周知する」としています。
この中で、環境汚染防止を含めた地球環境問題を重視し活動しています。

 環境汚染防止の中心「青少年のシンナー乱用防止=非行化防止」があります。
一般的に塗装は「シンナーを大量に使用する業種」とのイメージがあるようです。

事実、私たちが使用する塗料は溶剤形塗料が中心でしたから、塗装現場ではシンナーを多く使用していました。
ただし、この時代からシンナーが盗難にあったりして悪用されないように管理は十分に行っていました。

 周知の通り現在は地球環境問題抜きには考えられない時代になっています。
塗料も要望に応え水系化か進みました。
日塗装はこの水系塗料を研究しながら、積極的に使用するように取り組んでおり、建築塗装の70%以上は水系塗料に替わっています。

ただし、全ての塗料を水系化するのは困難ですから、溶剤塗料も使用しています。
しかし、この場合は、可能な限り「トルエン」を含まない塗料を使用しています。
やむを得ずに「トルエン」を含むシンナーを使用する時は、現場にシンナーを残さずに、都度持ち帰るなどの努力も行っています。

シンナー流出の事例では、塗装業界からは圧倒的に少ないわけですが、細心の注意を図ると同時に更に水系塗料の採用を強めていきたいと思っています。
皆様方の一層のご理解とご協力をお願いします。


(社)日本塗装工業会  会長 河野玉吉


企画・制作:(社)日本塗装工業会安全委員会
イラスト:山本重也
社団法人 日本塗装工業会安全委員会
〒150-0032 東京都渋谷区鴬谷町19-22(塗装会館)
TEL:03-3770-9901(代表)

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